鼻の症状とは

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鼻は、嗅覚と呼吸の両方の重要な機能を果たしています。
嗅覚については、鼻腔の上部に位置する嗅上皮の奥にある嗅球が臭いを感じる部位です。ここで、臭いに関する情報が電気信号に変換され、脳に送られます。

一方、呼吸器官としての鼻の役割については、鼻の穴は呼吸の通路であり、内部にある鼻毛が塵や病原体の侵入を防ぎます。
さらに奥にある鼻腔は、吸い込んだ空気の温度や湿度を調節する機能を持っています。
口での呼吸も可能ですが、喉などにはこれらの機能がないため、直接外気を吸い込むことになり、病気になるリスクが高まります。

鼻が慢性的に詰まるなどして鼻呼吸ができないなど、以下の症状に心当たりのある方は、一度当院をご受診ください。

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎とは、鼻の粘膜にアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が付着し、それによってアレルギー反応(くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど)が生じる状態を指します。
アレルゲンには様々な種類がありますが、一般的にはハウスダスト(ホコリ、ダニのフン、死がいなど)、ペットの毛やフケ、花粉などがあります。
花粉に関しては、ヒノキ、スギ、カモガヤ、ヨモギなどが一般的で、人によって反応する花粉は異なります。
また、花粉は飛散する時期にのみ反応するため、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)とも呼ばれます。
一方、ハウスダストなどは季節に関係なく反応するため、通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれます。

主な症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの他に、鼻のかゆみや嗅覚の低下などがあります。
さらに、花粉症の患者さんでは、目のかゆみ、充血、涙、目やになどの眼症状(アレルギー性結膜炎)や、皮膚のかゆみ、湿疹などもみられます。
治療については、まず特定のアレルゲンを避けることが重要です。
症状を抑えるための治療(対症療法)としては、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬などの内服薬、鼻づまりが強い場合は鼻用ステロイド薬などが使用されます。
眼症状がある場合は、抗ヒスタミン薬の点眼薬が用いられます。

また、アレルギー症状を根本的に治すための方法として、アレルゲン免疫療法があります。
これは微量のアレルゲンを体内に取り入れ、その量を徐々に増やして体を慣れさせ、アレルギー症状を改善する治療法です。
舌下免疫療法などがありますが、治療期間は3~5年を要します。

副鼻腔炎

副鼻腔炎は鼻腔の周囲に存在する4対の空間、すなわち上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞と呼ばれる部分に炎症が生じている状態を指します。
これらの部分は鼻腔とつながっています。

多くの副鼻腔炎は風邪による副鼻腔のウイルス感染やアレルギー反応などが原因となります。
炎症やその他の症状が1ヵ月程度で治まる場合は急性副鼻腔炎と診断され、3ヵ月以上続く場合は慢性副鼻腔炎と診断されます。
急性副鼻腔炎の場合、症状は通常一週間程度で改善します。

主な症状としては、膿が溜まり色付きの鼻水が出る、目や鼻の周囲が痛む、鼻が詰まる、痰を伴う咳、頭痛などがあります。

治療については、症状が軽度であれば経過観察が行われます。
薬物療法が必要な場合は、抗菌薬の使用や鼻洗浄が行われます。
薬物療法を3~6ヵ月続けても症状が改善しない場合は、手術療法(内視鏡下鼻・副鼻腔手術)が選択されます。

鼻出血(鼻血)

鼻の粘膜は薄く、特に子供では出血しやすいとされています。
鼻中隔の前部、キーゼルバッハ領域は特に出血しやすく、鼻血の多くはここから出ます。鼻血が出る主な原因は、鼻を強くかいたり、外部からの衝撃を受けたりすることです。
また、くしゃみや気温の変化も鼻血の原因となることがあります。
しかし、何らかの疾患が原因で鼻血が出ること(症候性鼻出血)もあります。
この場合、白血病、高血圧、貧血、鼻炎などが考えられます。頭を打った後に鼻血が出る場合も注意が必要です。

鼻血の止血方法としては、小鼻部分を指で約15分間強く押さえることが一般的です。
ただし、止血を始めてから20分以上経っても鼻血が止まらない場合は、何らかの疾患の症状である可能性があります。
この場合は、速やかにご受診ください。

鼻中隔弯曲症

鼻中隔とは、左右の鼻の穴を分ける壁のような部分(軟骨)を指します。
この鼻中隔が何らかの理由で極端に曲がってしまう状態を鼻中隔弯曲症と呼びます。

鼻中隔は思春期から大きく成長し始め、その過程で誰しもがある程度は曲がります。
しかし、その曲がりが過度になると、狭まった鼻の穴側で鼻づまりが生じたり、粘膜が刺激されやすくなり、鼻血や炎症が起こりやすくなります。

治療が必要となれば手術療法となります。
この場合、内視鏡下で大きく曲がった鼻中隔を一部摘出していき、鼻の通りをよくしていきます(鼻中隔矯正手術)。

嗅覚障害

嗅覚障害とは主に臭いを正しく感じ取ることができない状態を指します。
これは量的異常(臭いが感じられない)と質的異常(臭いが変わって感じられる)の2つに分けられます。
多くの嗅覚障害の患者さんは、量的異常による嗅覚の減退(臭いを弱く感じる)または嗅覚脱失(臭いを全く感じない)の状態です。

嗅覚障害の原因は大きく3つに分けられます。
気導性嗅覚障害は、鼻腔や副鼻腔などの病変(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など)により嗅覚が障害を受ける状態です。
この場合、原因となる疾患を治療することで嗅覚は回復します。
次に、嗅神経性嗅覚障害は、嗅細胞がダメージを受けている状態で、ウイルス感染による嗅粘膜の破壊、薬剤性嗅覚障害、篩骨洞炎による慢性副鼻腔炎などが原因となります。
最後に、中枢性嗅覚障害は、嗅球から嗅覚中枢までの経路で障害が起きる状態で、主に頭部外傷、脳腫瘍、アルツハイマーやパーキンソン病などの神経変性疾患が原因となります。
治療については、原因となる疾患が特定できれば、その疾患に対する治療が行われます。
また、副鼻腔炎などの炎症性疾患による嗅覚障害の場合は、ステロイド系の点鼻薬の使用も考慮されます。

鼻茸

鼻ポリープと一般的には鼻茸とも呼ばれ、鼻腔や副鼻腔の粘膜に生じるポリープのことを指します。
その形状は、こんにゃくや寒天に似ており、単独で発生することもあれば、複数発生することもあります。

鼻茸の発生原因は主に慢性副鼻腔炎による炎症性ポリープです。
この場合、左右の鼻腔に単独の鼻茸がみられます。
また、好酸球性副鼻腔炎では、多発性の鼻茸が両側の鼻腔に発生します。
さらに、副鼻腔真菌症の場合でも、一方の鼻腔で鼻茸が認められます。

主な症状としては、鼻茸が鼻腔内で大きくなるにつれて、鼻づまりや味覚障害が現れます。

治療については、まず原因となる疾患の治療から始めます。
ステロイドの点鼻薬などの薬物療法により、鼻茸が縮小することもあります。
症状が改善しない場合は、手術療法でポリープを除去します。
ただし、この方法では再発する可能性もあります。
根本的な治療としては、内視鏡下鼻・副鼻腔手術が行われます。